ビグルモワ

すべて物語にしてしまいたい

『思い出のマーニー』読みましてん

思い出のマーニー』読みまして、めちゃめちゃめちゃよかったです。ちなみに映画は未鑑賞。

「マーニーがいた頃」と「マーニーがいなくなった後」にざっくりと分けられて、前半はアンナとマーニーの日々が描かれる。アンナの療養先で出会った二人はなんだかわからないけど惹かれあい、とびきりのなかよしになる。マーニーはアンナのイマジナリーなやつで、マーニー=アンナなんだなと思って読んでいて、そうするとふたりの少女の似てる面異なる面もひとりの人間のもので、なんて感じに。マーニーとすごすうちにアンナは癒されて健康な女の子に成長していく。決定的な出来事は「風車小屋」で、理由のない恐怖を克服するそれは大人になる儀式なんだろうと思って、事実その恐怖の夜の経験がふたりを分かち、マーニーと会うことは二度となくなった。

……っていうここまででもう十分なのだけど、まだ半分あるからねこの話。後半、マーニーがあらわれることはもうなく、しかしアンナは変わりなく、今まで以上に健やかに海辺の町での生活を楽しむ。あんなに大切だったマーニーのことも忘れがちになってしまう。後半はある家族が出てきて、そのかかわりの中でマーニーとは誰だったのかという謎解きパートのようになる。まあうまくできすぎだし、そこまで言わんでもと思わないでもないけれど、ピースがするするとつながっていって、マーニーとアンナの物語の全体像が完成する。それはある種、現実的な回答ではあるのだけど、ああでもやっぱりマーニーは物語のはじまった瞬間から、一ページ目から、存在していたのだと思ってとても見事でした。

すっかり健康になったアンナは街へ戻るという大人になる物語でもあり、本当によかった。当初、いろいろなものに心をとざしていたアンナだけど、それはいろいろなものが重なっていたためであり、心からすべてを憎み嫌っていたわけでなくて、そのことにまずほっとする。わたしだったら拗ねている。アンナは最初からとても強い少女だった。ただしくジュヴナイルで、小学生の時に読めていたらなぁとか思ってしまった。

 

ジブリの映画は観ていないけど読了後に予告編だけみて、なぜ日本の話にしたのだと思ってしまった。機会があったら確認する。

 

新訳 思い出のマーニー (角川文庫)

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特装版 思い出のマーニー

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