自作解題――遠くまで飛んでけカイト
二回目短歌の感想をば。ここはひとつ。どうぞひとつ!
秘すれば花というのは変わらずに思うことではあるのだけど、初めてのことをする、続けていく、それが自分に馴染んでいく過程を記述しておきたいという気がする。馴れてしまったらその前には戻れないからね。とはいえ、早くも行き詰まりを感じているのね。くわしくは最後に書きたいと思うのだけど。
1.上様
神様も仏様でも上様で落としたいのよ交際費でさ
★上様っていったらまず領収書。誰だって「上様」の前では平等に「上様」。「接待交際費」は長くて入らなかったですね。
2.まれ
薄明の静かな音楽小さな寝息 くるまれている、つつまれている
★まれ、難しかった。直近でいったらドラマの「まれ」なんだろうけど、「稀」でもよいし「まれびと」とか単語もあるし。単語に隠す戦略だと、されてる系ニュアンスのと命令系が多くて、それは文法上しょうがないのだけど、とにかく最後まで使う単語が決まらなくて難産。
水曜の朝、午前3時的な風景、朝方でも夕暮れでも曇りの日でもいいのだけど、ささやかな場所でささやかな寝息がきこえるのって日常の休憩点として申し分ないんじゃないかと思う。恋人でも友人でも家族でも子どもでも人が安心して眠っているのはたまらない。しかし58777なので、短歌としては△よなと思っている。
3.ピアノ
悪童の泥だらけの足先が轢く不協和音のわたしはピアノ
★このピアノのイメージが強すぎてわかんなかったのが、ほかの方のを見てやっと別のイメージにたどり着けたのだった。悪童は「いやいやえん」のしげる、ですね。指先か足先か、弾くか轢くか、って思って、「轢」の右側って「楽」に似てるなーと思ったのでこっちにしてしまった。
4.星座
あの星座とってくれろと手を伸ばす 欲しいのはどれ 嗚呼かみのけ座
★サラリーマン川柳か! ほぼ迷いなく書いてしまったのだけど、ゆえに完全に頭の中でできてしまって身体性ゼロだなと反省している。しかし意外とかぶらないものだな、とも思った。
5.々
何にでもなれるんですよ我々は前の誰かに続いていれば
★まさかの漢字自己紹介。
6.G
Gくらいあるでしょなのにブラジャーもつけずにゆるされている男性
★迷って迷ってけっきょく手帳にメモってあった「男性はブラジャーしなくていいからうらやましい」を持ってきた。なんなんだろうねこのメモ。細かいことをいうとサイズはアンダーとトップの差だからー男性でGカップとかー(以下略)なんだけど、体感的にはある。「木村拓哉のG-SHOCK」は思いつけたんだけど切りました。合掌。
7.眠
何百年眠って待つわ王子様えり好みする費用対効果
★眠るのが超好きなので、寝てるだけならお安い御用で、ねむり姫的な人々も百年なんて気にしないで眠るんかなーと思ったりした。眠りをコストと考えるかどうかですね。なんつってー。
8.紫
本日も老婆が紫御髪(おぐし)キメ いきいきハッピー☆健康プラザ
★出勤途中にある健康プラザ的なところに高齢の方が群がっているのを見ると、とても微妙な気持ちになるのだった。しかしまあ皆様満足して通ってますからね。
9. ひたひた
こぼれそな心臓ひたひたエントロピーエントロピーの明るい渦巻き
★今回はこれが一番自分から飛んで行ったなぁという感じがする。心がざわざわするときは「エントロピーエントロピー」と唱えて落ち着く。
10.【枕詞】秋の田の
秋の田のさんざめく穂の内側に過去と未来が折り畳まれてる
★はじめは秋の味覚がたくさん入ってたのが、他の人の歌を見て路線を変更。めちゃくちゃわたしっぽいなと思ってしまう(過去と未来が折り畳まれてるというへんが)。
あと、「折り畳まれてる」が8で、たとえば「折り畳まれて」で7にしたら座りはいいのだけど、妙なプライドというか、わたしはそこで止まれないナーとか思ってしまった。短歌の本とかを読んでいて、ここをこうしたら綺麗に57577になるのにと思ったことがあり、その作者たちもこんなような気持ちで字余りとか字足らずにしたんだろうかとか考えた。歌として外に出してしまったら個人のこだわりなんてどーでもいいよなーと思ったので、短歌側からの要請がない限り、可能であるならば57577を守った方がいいような気がした。気はする。
前回と同じくまず最初はお題を眺める、紙にメモを書いていく。それをとりあえず文章にしてみる(できるならば57577を意識して)。のが、この時点で文字があふれるあふれる575788とかになってる。多すぎる。のをどうにか整えたり。整えるのは言い方を変えたり順番を変えたり、場合によっては枝を切ったり。これは前回よりばっさり切れるようになった。当初の案はいちおうメモにとってあるけど、今となっては完成形の方がだいじで振り返ることはほぼない(不思議だ)。「上様」「星座」「眠」は最初のイメージからほぼ変更なし。「ピアノ」「ひたひた」「秋の田の」は半分くらい浮かんでたかな。
でも全然思い浮かばないのもたくさんあって、そのへんでほかの投稿を見にいく。それで、ホーとかウーとか思って、なんとかほかの方向性も決めていく。自動的に決まるはないから決める。この段階で思いつけたのは「々」「G」、考え直したのは「ピアノ」「秋の田の」。思いついても決まらないのは考え直しで「G」と「紫」はけっきょく手帳のメモから持ってくる。「まれ」が決まらなすぎて、「まれ」のつく単語をずーっと書き出すという作業。そんな感じでフウフウ言いながら終了を自分で言いわたし。名詞で終わるのが多くて、そういうのが固定化されると雰囲気が似てきてしまうような。
本当に性格が出るなぁというのがあり、心情をうつすという点で、こういう心理学のテストがあったと思って少しげんなりしてしまった。歌たちにはわたしから出てきながら、どんどん遠くに行ってもらいたいと思った。
半年くらい前かと思うけど、物語だ小説だと考えていたころに目にうつるすべてのものがメッセージ的に「物語的どこでもドア」みたいなことを書いたのだけど、歌に続く扉もどこにでもある。現に今回も日常の延長で読めた歌がある。のだけど、ほかの方の歌を見ていて、この人うっま! ってなった人たちはもうレヴェルが違い、どこでもドアどころかスペアポケットを持っていて、何もないところから素敵なものものをひょいひょい取り出している(ように見える)(あとなんか、良い下の句を見つけておければそれだけで決まる感じがある)。それは熟達はたまたセンスの問題もあるのだろうけど。それでわたしは慣れたいのか上手くなりたいのかよくわからずに、でもなんとなく真似て上手いっぽくなってもしょうないなと思えたので、なんか自分路線を行くしかないなと思っている。歌よ歌よ大空どこまでも行ってらっしゃい。しかしカイトの糸をもっているのはわたし(なのか?)。